化学メーカーで女性研究者として働く【デメリット5選】

  • 2021年12月26日
  • 2022年1月23日
  • 研究職
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理系大学生
得意科目が理系だったから大学は理学部に入ったけれど、研究者は自分に合っているのかな?
理系大学生
企業で働く女性研究者のデメリットってどんなこと?

こんな疑問にお答えします。

 

この記事では化学メーカーでの女性研究者の働くときのデメリットについて、研究開発職7年目の私が解説します。

 

まず、私のスペックを紹介しますね。

   大手化学メーカー 研究開発職 7年目

   地方国立大学 院卒 (理学部)

 アラサー既婚者

    転職経験なし

 

転職経験はありませんが、働いていた会社が吸収合併されていますので2社分の福利厚生や待遇を知っています。

 

さらに大学時代の友達とも定期的に情報交換していますので、友達が就職した東証1部上場の化学メーカー3社+大手の子会社 非上場化学メーカー2社を合わせた合計7社分の情報を元に、この記事を作成しています。

 

女性が化学メーカーで研究職として働いて幸せになれるかは、人によります。

人によって人生の優先順位は違うので、正解はありません。

 

このブログでメリット、デメリット両方を紹介していきますので、自分の優先順位はどうかな?と考えながら読んでみてください。

 

では、早速見ていきましょう。

デメリット①:大学院卒で婚期が遅れがち

 

理系研究者として企業で働くためには”大学院卒以上”の最終学歴が必須になります。

つまり浪人せずにストレートで大学院を卒業しても、社会人になった時点で24歳です。

 

大学時代から付き合っている彼氏がいても、就職でお互いの勤務地が離れてしまえば“遠距離恋愛” or  ”別れる” のどちらか選択するすることになります。

 

遠距離恋愛で続いたとしても、いざ結婚するとなった時はどちらかが転職することになりますよね。

 

私の職場には、国立大で大学院を出たにもかかわらず、旦那さんの職場近くに正社員の仕事が見つからなくて派遣として年収300万円台で働いている女性が何人もいます。

 

大学院まで出たのにですよ?

もし奨学金を借りていたら、どうやって返済していきますか?

 

別れて就職してから彼氏を探すにしても、研究拠点は全国各地(しかも大抵は田舎)にあります。

田舎は若い人が少なく、会社以外の出会いが少ないです。

 

もちろん職場結婚した人も何人か知っています。

でも、あなたがいいなと思った人に彼女や奥さんがいる可能性はありますよね。

地元や友達から離れた場所であれば、知り合いからの紹介も期待できません。

 

大学卒の22歳でも同じように就職を機に別れる人はいくらでもいますが22歳で就職してから結婚相手を探すのか、24歳から探すのかでは、心の持ちようが大きく変わってきます。

 

20代の2年間の差は大きいです。

他の同じスペックであれば、若い女性の方が圧倒的にモテます。

内閣府が公表している「平成29年度 男女共同参画白書」によると、大学院に進む女性の割合は全体の30%なので、70%のライバルと比べてスタートが2年遅れる可能性があることは、間違いなくデメリットと言えます。

デメリット②:危険性が高い薬品を扱う場合がある

 

私は大学の研究室時代を合わせると10年以上、化学薬品を使って毎日実験してきました。

その経験から断言しますが化学の実験で使用する試薬は、高確率で人体に有害です。

 

安全に試薬を取り扱うための実験設備やルールは整ってきていますが、それでも薬品からの影響は0にはできないというのが正直なところ。そんなものを週5日、何十年も取り扱いたいですか?

 

しかも研究開発では新しい化合物を扱うので、毒性は「No Data」なものもザラにあります。

身体への影響がわからながわからないものを扱うって、怖すぎますよね。

 

例えば、アスベストは1990年代に様々な場所で使われていましたが、健康被害が確認された現在では全面的に製造が禁止されています。

 

同じことが今日使用している試薬でも起こるかもしれません。

今は大丈夫でも10年後に病気になってしまったら、と思うと本当に怖いですよ。

 

ちなみに、私が先月扱った試薬には「皮膚に触れると生命の危険」と書かれたものもあります。

先ほど話に出てきたアスベストも、試験研究用では使用可能です。

 

自分が働いているからこそ思いますが出産を考えていらっしゃる女性には特に、化学メーカーの研究者はおすすめできません。

デメリット③全国転勤(場合によっては海外転勤)がある

日本の化学メーカーの研究所は国内にあるので、国内転勤が大部分を占めます。

しかし一部の人は技術営業として中国、アメリカ、ヨーロッパに数年駐在して欲しいと言われる場合があります。

30歳の既婚女性でも、2年間ドイツで旦那さんと離れて駐在した方を知っています。

 

その方は帰国された後お子さんに恵まれていらっしゃいますが、子供が欲しい時期に海外駐在して欲しいと言われる可能性があることは頭に入れておいてください。

 

複数の研究所がある企業の場合、10年で1度も転勤しない人の方が珍しいです。

私が働いている会社では、5年以内に転勤を経験する人が6割くらいいます。

 

お子さんが小さい、介護が必要な親がいるなど家庭の事情があれば考慮してくれる場合もあります。

 

しかし総合職のサラリーマンである以上、転勤は基本的に断れないので覚悟して入社してください。

(入社面接時に転勤可能か確認されます。)

デメリット④転職による年収アップが難しい

研究者も転職する時代です。

実際に私が勤める会社や取引先でも転職する人は年々増えています。

 

そして転職によって年収は下がるか横ばいになるケースが多いと感じます。

 

なぜ年収アップが難しいのか。

それは研究者として最大のアピールポイントになるはずの「前職で得た化学の知識」を転職先で生かすことができないからです。

 

例えば、あなたが前の会社でシャンプーの開発をしていたとしましょう。

シャンプーの成分や製造方法を転職先の会社で開示することがNGなのはわかりますよね。

では、その成分でシャンプーを製造するまでに至った開発の知識はどうでしょうか。

 

AとBの成分を合わせるとすごく泡立ちがいいけれど、一般的なシャンプーに使われているCを入れると泡ぎれが悪くなる、という情報は言っていいのでしょうか。

ちょっと判断に迷いませんか?

 

もちろん業界として一般的な情報だったり、会社が出願した特許が公開されている、会社が社外向けに公開している(学会発表など)であればOKです。

 

でもその業界で働く人が誰でも手に入れられる情報しか出せないあなたを、企業は高い年収で採用してくれるでしょうか?

 

これまでの研究で得た知識(研究者としての最大アピールポイント)が使えない前提で、あなたは転職活動をすることになります。

 

マネジメントスキルがあるといっても、何年も一緒に頑張ってきた部下は、転職先にはいません。

新しい人間関係に入って、違う開発材料を扱う部署で、同じパフォーマンスを発揮できますか?

 

以上の理由から、メーカーの研究者は転職を繰り返しながらキャリアアップしにくい、転職で年収を上げにくい職業と言えます。

デメリット⑤:日本の化学メーカーは今後衰退する可能性が高い

安定しているイメージを持たれている方も多い化学メーカーですが、現役で化学メーカーで働いている私は「20年後に生き残っている化学メーカーはごく一部で、他は中国に負けてしまう」と思っています。

 

日本最大の化学メーカーである三菱ケミカルは第6位、一方、中国最大の化学メーカー中国中化(シノケム)は第1位、

ついにアメリカのBASFを超えました。

 

化学業界の世界シェアと業界ランキング(2020年)

1位 中国中化(シノケム) 3.34%

2位 BASF 1.61%

3位 シノペック 1.27%

4位 ダウ 0.88%

5位 ライオンデルバセル 0.63%

6位 サウジ基礎産業公社 0.62%

7位 三菱ケミカル 0.61%

8位 エクソン・モービル 0.53%

9位 デュポン 0.46%

10位 イネオス 0.37%

11位 住友化学 0.36%

 

「iPhoneを分解すると、ほとんどの素材が日本製」という話を聞いたことがあるかもしれません。

 

しかし中国は日本企業が提供している素材を国内で調達するために、日本企業の数十倍の資金と人員を投入して研究開発を進めています。

そして一度同じ性能の素材が中国で開発されてしまうと、輸送コストがかからない中国製に太刀打ちする術はありません。

 

そしてこれから研究者として活躍するであろう大学生も中国は優秀です。

THE世界の大学ランキングでは中国の精華大学は20位、東京大学は36位となっています。

 

日本企業で働いている日本人と同等、もしくはより優秀な研究者が中国企業でより多くの研究費用を使いながら、より多くの人員で研究開発を進めています。

 

どう考えても、勝つの無理だと思いませんか?

 

これまでのノウハウが日本にはある!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本より先にノウハウを蓄積してきたアメリカ企業の売り上げを中国企業が上回っていることを考えると、それだけでは負けてしまう業界なのは間違いありません。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

特に、転職しにくい職種なのに生き残れる企業が少ないのは、サラリーマンとして致命的です。

 

でも「どんな仕事にもデメリットはある。それより自分が関わった製品が世に出る喜びを味わいたい!」という方もいらっしゃいますよね。

 

次は研究者として働くメリットも紹介する予定なので、そちらも併せて読んでいただけると嬉しいです。

ではまたお会いしましょう。

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